KEN SATO 展
オーロラへの歩み・砂のポエジー


蒸し暑い日が続いています。梅雨明けが待たれます。皆様お変わりなくお過ご
しのことと思います。7月のギャルリーMMGは、『KEN SATO展-
オーロラへの歩み・砂のポエジー』をひらきます。

静岡県沼津市に生まれた佐藤憲は、60年代半ばに故郷を離れ、ストックホルム
に定住し、KEN SATOとしてスウェーデンに帰化し、画家となりました。

60年代の半ばは、いま振りかえってみると、世界像が大きく変わりはじめた時
代です。社会的にも政治的にも激しく動きだし、これまでの世界を支えてきた
論理が破綻をきたしました。世界的な経済成長が自然の生態系を崩しはじめた
のもこの頃からです。今世紀に深い傷口を残すことになる問題、すなわち「自
然と人間の関係」が地球規模で問われはじめました。

この時代に若いケン・サトーは日本を飛び出し、アメリカやヨーロッパを旅し
たあと、永住の地としてスウェーデンを選びました。日本の多くの画家志望の
若者たちがアメリカやフランスなどを指向するなかで、ヨーロッパの周辺の地
を目ざすということは、それなりの決意があったことと思います。芸術的環境
や芸術的刺激よりも、彼は北欧の風土に引きつけられました。そこに自然環境
の保全と人間の欲望の調和のひとつの姿を発見したからだと思います。

昼と夜、光と影。冬は氷と雪と霧に囲まれ、夏は無限にひろがる青く明るい夜
空を眺め、遠くを見ながら、彼は気づいたに違いありません。美術には「自然
基体」というものが、いかに大切であるかということに。そして、美術は自然
と一体となったとき、はじめて人間を健やかさに導きうるということをスウェ
ーデンでの長い生活のなかで、明確に自覚した80年代の初め、彼は具象的な油
絵を棄てて抽象へと向いました。

ケン・サトーは、白夜の国の自然に全感覚を開きました。人があまり目をむけ
ない石や砂もそのひとつです。彼は、スウェーデンの各地で採取した砂を、無
数のガラス瓶に詰めてアトリエにならべています。それらは「金色に輝く褐色
から白っぽいベージュまで、素晴らしいニュアンスの自然独自のパレットだ。
」とスォーレン・エングブロム(ストックホルム現代美術館学芸員)が報告し
ています。ゲーテは目を閉じて、花や模様を想像していると、その姿がまるで
万華鏡のように変わってゆくのを見ることができたそうですが、ケン・サトー
も集めた無機の砂粒を朝の光の下で眺めながら、さまざまな形に変化する自然
の姿を瞼のうちに描くことができるのだろうと思います。

その結晶化が、今回ならべる砂のタブローとインスタレーションです。どうか
ご覧下さい。




とき  1996年7月1日(月)-23日(水)

11:00-18:00
日・祭日休み

ところ  ギャルリー MMG
〒106-0044 東京都港区東麻布1-5-8麻布保坂ビル
TEL 03-3686-7666 FAX 03-3505-5830